大気中マイクロプラスチック

大気中マイクロプラスチック(Airborne Microplastics, AMPs)は環境に深刻な影響を与え、人体や気候に悪影響を及ぼす恐れがあります。しかし、その特性や起源、分布などはまだ十分に解明されていません。早稲田大学が主導するAMφプロジェクトは、様々な分野の専門家が集まり、大気中マイクロプラスチックに関する最新の知見や課題を共有し、研究の発展と社会への還元を目指しています。このプロジェクトは大気中マイクロプラスチックの問題に真摯に向き合う日本の先進的な取り組みです。
パーキンエルマーはAMφプロジェクトに共同研究者として参画し、赤外分光学の専門分野から研究を支援しています。

活動報告

樹木の葉面に付着するマイクロプラスチックの分析手法に関する技術報文が日本環境測定分析協会の機関誌『環境と測定技術』に掲載されました

樹木の葉面のマイクロプラスチックの前処理方法とFTIRによる分析方法を新たに検討し、日本の森林を代表するコナラに適応しました。さらに葉面のマイクロプラスチックと、森林内、森林外の雨水中に含まれるマイクロプラスチックと比較することで、森林樹冠によるマイクロプラスチックの捕捉の実態を明らかにしました。

雑誌名:環境と測定技術/Vol.52 No.1 2025
論文名:コナラ葉面に捕捉された大気中マイクロプラスチックの分析方法
執筆者名(所属機関名):著者: 須永奈都1)、大河内博2)、宮崎あかね1)、新居田恭弘3)
(1 日本女子大学 2 早稲田大学 3 パーキンエルマー合同会社)

大阪公立大学の藤井祐介准教授が国際学会Conference on Earth Sciences and Sustainable Development (CESD) 2024で大阪都市域で複数年にわたる大気中マイクロプラスチックの定期観測を行った事例に関する講演を行いました

大阪公立大学の藤井祐介准教授が国際学会Conference on Earth Sciences and Sustainable Development (CESD) 2024で大阪都市域で複数年にわたる大気中マイクロプラスチックの定期観測を行った事例に関する講演を行いました。パーキンエルマーは本研究を産学連携による共同研究活動として支援しています。

【国際学会情報】

会議名: Conference on Earth Sciences and Sustainable Development (CESD) 2024
場所: “University of Science, VNU-HCM”, Ho Chi Minh City, Vietnam
期間: 2024年11月11日~12日 (発表日: 11月11日)
会議HP: https://geology.hcmus.edu.vn/en/cesd-2024-meeting
発表タイトル: Identification of Airborne Microplastics: A Case Study in Osaka, Japan
発表者: Yusuke Fujii1, Kotaro Kitano1, Yuto Tani2, Yosuke Onozuka2, Moene Komatsu2, Hiroshi Okochi2, Yasuhiro Niida3, Norimichi Takenaka1

1 Graduate School of Sustainable System Sciences, Osaka Metropolitan University, Sakai, Japan
2 Graduate School of Creative Science and Engineering, Waseda University, Shinjuku, Tokyo, Japan
3 PerkinElmer Japan G. K., Yokohama, Kanagawa, Japan

米科学誌「Environmental Chemistry Letters」に森林がマイクロプラスチックを補足することを示した共同研究論文が掲載されました

日本女子大学大学院理学研究科の宮崎 あかね教授、同理学研究科博士課程前期2年の須永 奈都氏、早稲田大学理工学術院の大河内 博教授、およびパーキンエルマー合同会社の新居田恭弘らによる研究グループは、葉面に捕捉された大気中マイクロプラスチック(AMPs: Airborne microplastics)に適した葉面洗浄法を開発し、AMPs を µFTIR-ATR イメージング法で検出、同定することにより、AMPs が葉面のエピクチクラワックスに吸着・捕捉されるというメカニズムを初めて解明しました。

本研究により、森林が陸域における AMPs のシンク(吸収源)として機能しており、AMPs の環境動態の解明、ヒトによる AMPs 吸入リスク低減において森林が重要であることを明らかにしました。

本研究成果は、『Environmental Chemistry Letters』誌(論文名:Alkaline extraction yields a higher number of microplastics in forest canopy leaves: implication for microplastic storage)にて、2024年3月20日(現地時間)にオンライン掲載されました。

雑誌名:Environmental Chemistry Letters
論文名:Alkaline extraction yields a higher number of microplastics in forest canopy leaves: implication for microplastic storage
執筆者名(所属機関名):須永奈都1、大河内博2、新居田恭弘3、宮崎あかね1
(1 日本女子大学、2 早稲田大学、3 PerkinElmer Japan合同会社)
掲載日時(現地時間):2024年3月20日
掲載URL:https://doi.org/10.1007/s10311-024-01725-3
DOI:10.1007/s10311-024-01725-3

プレスリリース

雲水中のマイクロプラスチック観測の共同研究が、New York Timesによる『2023年にはじめて起きたこと20選』に選ばれました

雲水中に大気中マイクロプラスチックが存在することを初めて実証した共同研究が、New York Timesによる『2023年にはじめて起きたこと20選』に選ばれました。

20 Things That Happened for the First Time in 2023
Dec. 5, 2023

https://www.nytimes.com/2023/12/05/special-series/20-things-that-happened-for-the-first-time-in-2023.html

雲水の野外観測で初めてマイクロプラスチックの存在を実証した共同研究が早稲田大学のプレスリリースに掲載されました

早稲田大学とパーキンエルマーを含む研究グループは、富士山と丹沢大山で雲水の試料を採取し、大気中のマイクロプラスチック(AMPs)の存在を初めて明らかにしました。本研究によると、雲水中では親水基を有するAMPsが濃縮され、ポリエチレンやポリプロピレンのような本来親水基を有しない物質も紫外線劣化により雲凝結核や氷晶核として機能し、環境や健康リスクを高める可能性があることが示されました。
―プレスリリースを要約―

プレスリリース(日本語版) Wed, 23 Aug 2023

Press Release (English)

米科学誌「Environmental Chemistry Letters」に大気中マイクロプラスチックの共同研究の論文が掲載されました

早稲田大学、パーキンエルマー他6機関の共同研究です。
富士山の山頂の雲水中から大気中のマイクロプラスチックが発見されました。雲水中からマイクロプラスチックを検出したのは世界初です。

タイトル:
Airborne hydrophilic microplastics in cloud water at high altitudes and their role in cloud formation

著者:
Yize Wang1, Hiroshi Okochi1, Yuto Tani1, Hiroshi Hayami1, Yukiya Minami2, Naoya Katsumi2, Masaki Takeuchi3, Atsuyuki Sorimachi4, Yusuke Fujii5, Mizuo Kajino6, Kouji Adachi6, Yasuhiro Ishihara7, Yoko Iwamoto7 & Yasuhiro Niida8
1 Waseda University, Tokyo, Japan
2 Ishikawa Prefectural University, Ishikawa, Japan
3 Tokushima University, Tokushima, Japan
4 Toyo University, Saitama, Japan
5 Osaka Prefecture University, Osaka, Japan
6 Meteorological Research Institute, Ibaraki, Japan
7 Hiroshima University, Hiroshima, Japan
8 PerkinElmer Japan G.K. Kanagawa, Japan

掲載日時(現地時間):2023年8月14日
掲載URL:https://doi.org/10.1007/s10311-023-01626-x

米科学誌「Chemosphere」に大気中マイクロプラスチックの共同研究の論文が掲載されました

日本獣医生命科学大学、早稲田大学、PerkinElmer Japanの共同研究です。
国内に生息する野鳥の肺から大気中のマイクロプラスチックを検出されました。

タイトル:
Airborne microplastics detected in the lungs of wild birds in Japan

著者:
Yurika Tokunaga1, Hiroshi Okochi2, Yuto Tani2, Yasuhiro Niida3, Toshio Tachibana4, Kazuo Saigawa4, Kinya Katayama1, Sachiko Moriguchi1, Takuya Kato1, Shin-ichi Hayama1
1 Nippon Veterinary and Life Science University, Tokyo, Japan
2 Waseda University, Tokyo, Japan
3 PerkinElmer Japan Co. Ltd., Kanagawa, Japan
4 Applied Biology Co. Ltd., Tokyo, Japan

DOI:https://doi.org/10.1016/j.chemosphere.2023.138032

第63回大気環境学会年会 特別集会にて講演しました

開催日:2022年9月14日(水)

タイトル:µFTIR ATRイメージングによる大気中マイクロプラスチック (AMPs) 分析手法の開発

講演概要:
近年、環境分野の研究の発展とともに着目されるマイクロプラスチックの小径化が進んでおり、微小なプラスチックを短時間で効率よく検出する分析手法が求められている。AMPs計測の自動化における現状と課題に対し、プロジェクトで得られた研究成果および今後の取り組みを紹介する。

講演者:PerkinElmer Japan合同会社 アプリケーションリサーチラボ 新居田 恭弘

IIAE特別セミナーにて講演しました

開催日:2022年1月14日(金)

タイトル:赤外分光法・顕微IR の基礎と大気中マイクロプラスチックへの応用

講演概要:
赤外分光分析(IR)は分子振動に基づく赤外吸収を利用し未知物質を同定する分析法である。蛍光による測定データへの妨害がなく,幅広い試料に対して良好な結果が得られる。
顕微IRは赤外光を凹面鏡で集光でき,主に1mm以下の物質のIR測定に利用される。近年の顕微IRは高感度な面分析手段に発展しており,微小な物質を高速かつ効率よく測定できるIRイメージングが様々な技術分野で活用されるようになってきた。
大気中マイクロプラスチック(AMPs)の実態解明のため,粒子径10μmを下回る極めて小さなAMPsの検出が求められる。顕微IRにおいて最も高い空間分解能が得られるATRイメージング法を検討した結果,粒径数μmのAMPsの同定が可能となった。更にプラスチックの劣化に高い感度を持つATRイメージングの特性を利用し,環境中での劣化期間の推定について検討した。本セミナーでは,赤外分光分析および顕微IRの原理と仕組み,大気中マイクロプラスチックへのATRイメージングの応用と課題について述べる。

講演者:PerkinElmer Japan合同会社 アプリケーションリサーチラボ 新居田 恭弘

PKI Global Environmental Sciences Summit(環境科学サミット)にて、早稲田大学 大河内先生に講演いただきました

開催日:2021年6月4日(金)

タイトル:Airborne Microplastics in Urban, Tropical and Free Tropospheric Atmospheres

講演者:
早稲田大学 理工学術院 創造理工学部 環境資源工学科
教授 博士(工学)  専門:環境化学
大河内 博先生

技術資料(アプリケーションノート、テクニカルノート)